ホテル経営の開業資金はいくら?必要な初期費用や失敗しないための準備を徹底解説
ホテル経営の開業資金はいくら?
必要な初期費用や失敗しないための準備を徹底解説
ホテルの開業、経営をする際は、どこから手を付けたら良いのか見当が付かない方も多いと思います。この記事では、ホテルの開業に必要な費用や準備など基礎的なことを解説していきますので参考にしてみてください。
ホテルの収益構造と経営者の年収は?
ホテルは大きく分けて3つの収益構造からなっています。ホテルの経営を成功に導くには、3つの構造の構成比を把握し、コントロールしていくことが必要になります。
ここでは、ホテルの収益構造について詳しく解説していきます。
ホテルの収益を生み出す3つの柱
ホテルの収益構造は以下の3つの柱で成り立っています。
- 宿泊
- 飲食
- イベント(結婚式、祝賀会などパーティー、宴会関連など)
収益 | 経費 | |
---|---|---|
宿泊 | 宿泊代 | 人件費 光熱費 消耗品費など |
飲食 | 食事代 飲料代 サービス料 |
材料費 人件費 光熱費など |
イベント | 各イベントによる | 人件費 光熱費 仕入れなど |
特にホテル経営において中心となる収入源は宿泊であり、利益率を上げるには客室の稼働率や宿泊料金について見直すことが重要になります。
また、宴会場やレストランなどを併設しているホテルであれば、飲食・イベントも大きな収入源となります。利益率でいうと、宿泊よりも高くなるケースが多いのが特徴です。 宿泊しているゲスト以外からの利益も見込めるため、利益率を上げるにはサービスそのものの品質を向上させることが大切になります。
ホテルの業態は主に3種類(ビジネスホテル・シティホテル・リゾートホテル)
ホテルの業態は大きく分けて以下の3つです。
- ビジネスホテル
- シティホテル
- リゾートホテル
ビジネスホテルは、一般的にビジネスマンが出張に利用するホテルです。そのため、サービスも必要最低限でシンプルな作りになっており機能性重視のホテルと言えます。しかしビジネスホテルは宿泊費用が安価なため、最近では旅行者も宿泊するようになってきています。
シティホテルは、文字通り都市部にあるホテルです。客室はおしゃれで一人での宿泊からファミリーの利用もあり、スイートルームのような特別室も設けてあります。
シティホテルはビジネスホテルよりランクアップされたもので、レストランが付随していたり結婚式場として使われたりすることもあります。建物の雰囲気や調度品にもこだわりがあるため、ビジネスホテルなどより宿泊費用は割高になる傾向にあります。
リゾートホテルは、主に観光、旅行目的の人をターゲットに作られています。国内外からの観光客がリラックスして宿泊できるような環境を整えています。海外からの観光客もいるため、ビジネスホテルやシティホテルなどより長期滞在するケースが多いでしょう。長期滞在できるように大浴場やプール、ジムなどが併設されているところもあります。
ホテルの開業資金はいくら?
ホテルの開業資金はケースバイケースです。一番大きく変わるのはスタート段階に建物がない0からの状態か、居抜きでリフォームなどからスタートするかという点です。
もし建物を最初から建てる状態での開業資金なら、数億円は必要となってくるでしょう。居抜きで用意できた建物の場合なら、一般的な開業資金は約1,500万円以上と言われています。
建物以外でかかる開業資金として必要な経費は、以下のようなものがあります。
- 許認可取得費
- 設備費・物品購入費
- 初期運営費
それぞれの詳細は後ほど詳しく解説していきます。
ホテルの運営方式
ホテル経営を始める開業資金の予算を知るためには、まず大前提としてホテルの運営方式を決めておく必要があります。ホテルには大きく分けて4つの運営方式があるので、一つひとつ解説していきます。
所有直営方式
「所有直営方式」は、その名の通り自分で所有して自分で運営する方式です。自分の理想の形があるなら、この所有直営方式が最も適切だと考えられます。しかし、所有直営方式は4つの方式の中で一番費用がかかります。土地の選定から全てを行うため時間、費用を最も使うことになるでしょう。
フランチャイズ方式
チェーンに加盟するタイプの「フランチャイズ方式」という方法もあります。飲食店ではメジャーな方式です。ホテル経営が夢というより、ホテルを手段としてビジネスをしたい人などが選ぶ傾向にある方式でしょう。
開業前の工事や建物に関することはフランチャイズする側が負担します。ホテル勤務の経験がなくてもノウハウがあるため運営しやすいでしょう。ただし、自分が所有者ではないため、フランチャイズする側のやり方、方針に従って運営しなければならず自由度は低いと言えます。
管理運営受託方式(MC方式)
資金は十分にあって、ホテル経営の知識や運営の自信がない場合は「管理運営受託方式」がおすすめです。管理運営受託方式は、ホテル運営を完全に委託する方法です。しかし、ホテル自体の建物や設備、人件費など費用面は全て自身で工面します。
例えば元からさまざまな経営をしている人が、ホテル経営も視野に入れる際などによく使われる方式です。
リース方式
リース方式は4つの中で利用する人が一番少ない方式です。
自身が土地を探して決めて、建物を建てるまでを行い、できたホテルを外部の運営会社に貸し出す手法で、賃貸のスタイルで一定の賃料が収入となります。一定の賃料を貰えるため収益としては安定しますが、運営する会社が撤退すると別の会社探さなければならないリスクがあるでしょう。
ホテル経営に必要な初期費用
ホテルを経営していく上で必要な初期費用は諸々あります。まずは建物に関する物件取得費から経営するために必要な許認可取得費、実際に運営していくために必要な設備費・物品購入費や初期運営費用です。
それぞれの詳細を解説していきます。
物件取得費
フランチャイズ方式以外で経営をする際は、物件取得費が必要資金となります。家を建てる際と同じで、土地代、建設費用などホテルそのものを立てるための費用が「物件取得費」です。
2024年現在、資材費が高騰していることに伴い建設費の高騰、建設期間の長期化が慢性的に続いているようです。ホテル建設は、住宅建設と規模が異なり多額の費用がかかるので、建設タイミングは情勢を見ながら計画する必要があるでしょう。
許認可取得費
「許認可取得費」は、ホテル運営にあたって必要な資格を取得する費用です。
ホテル運営の許認可取得費がかかるものとして、以下があります。
- 旅館業営業許可証
- 消防設備の設置
- 衛生管理者
旅館業営業許可証は自治体に交付してもらうもので、基本的な申請料は2~3万円です。
申請は複雑で、必要書類が多数あり、たくさんの情報が必要なため個人で行うには時間がかかります。多くが外部委託しているのが現状ですが、外部委託になると数十万かかります。
また、許認可取得費用の中で一番高額なのは消防設備の設置で、ホテルの規模になると数百万円が必要となってくるでしょう。
設備費・物品購入費
設備費、物品購入費は、運営していくために必要なものを用意する費用です。大きなものから細かいものまでありますが、買いそろえていくと大きな額になります。
設備費や物品で必要なものは以下になります。
- ベッド
- 寝具類
- 各部屋のエアコン
- 各部屋に必要な家具や家電
- アメニティ類
- フロントに必要な家具家電
ほかにはホテルスタッフにかかるものとして、制服や名札などいくつかあります。ホテルの種類やコンセプト、形態によって設備費・物品購入費は大きく変わってきます。
ビジネスホテルなら装飾品などは特に必要なく1~2日過ごすための最低限の備品があれば問題ないですが、高級ホテルやおしゃれなホテルになると調度品や装飾品などにこだわる必要も出てくるため、数百万の差があるでしょう。
初期運営費
初期費用として、ある程度の期間分の初期運営費用は、最初に目途を立てておく必要があります。
ランニングコストとしてかかる諸費用には以下のようなものがあります。
- 人件費
- 水道光熱費
- 保安費
- 仕入れ費
- 広告宣伝費
オープンする際は、売上のめどが立ちづらいので2~3ヵ月分の資金は初期費用として組み込んでおいた方が安心です。
ホテルを開業するまでの準備や流れ
ホテルを開業するまでに準備することは多数あります。フランチャイズやMC方式、リース式であればいくつかそれぞれの業者に任せることになりますが、自身で完全運営するときには、全てを自身で行う必要があります。
流れとしては、事業計画の策定から開業前に必要な準備、運営に大きく関わる集客や従業員の確保育成までが必要となります。ここでは、準備、流れの詳細を解説していきます。
事業計画を策定する
最初に行う重要なことは「事業計画」の策定です。これはホテル運営に限らず事業をしていくなら必要不可欠な準備です。
- 事業内容
- サービス内容
- 収益の見通し
- 人員計画
策定ポイントとしては、十分な収益を確保し事業として成長できるという見込みが分かる内容にすることです。この事業計画をもとに、資金調達やさまざまな機関からの協力を得ることができます。
資金調達をする
ホテル開業するには大きな資金を必要とします。そのため多くの場合では、銀行融資か出資を受けることとなります。
出資の場合は出資者にも経営権が発生するため、全てを思い通りに運営することは難しいですが、資金面の不安はなくなるでしょう。一方で銀行融資の場合、その後のホテル運営は自身の思う通りにできますが、銀行で受けた融資をローンとして返済していく必要があります。
物件を取得する
ホテルの建物、いわゆる「箱」の部分が必要です。その箱を土地から自分で選定するような0からのスタートなのか、いわゆる中古物件や居抜き物件を購入するのか、賃貸にするのかを決めて、その物件を探し取得します。基本的には、不動産会社に相談するケースがほとんどです。
営業許可を取得する
前述の通り、物件まで決定したら今度は実際に運営していくための営業許可を各所で取得します。必要なものは、旅館業営業許可証や消防設備の設置、衛生管理者資格などです。
従業員の採用や教育をする
運営できるようめどが立ったら、ここで少し早めに従業員の確保、教育が必要です。ホテルオープンまでに教育を完了しておくスケジュールで、逆算して育成計画を立てます。
特に採用に関しては時間がかかるため、早めに取り掛かる方が良いでしょう。従業員募集の媒体は何を使うか、実際に従業員は何人必要でどれくらいの賃金にするかなど人員確保、育成にも十分な計画が必要です。
集客を行う
人、モノ、カネのめどが付いて、いよいよゲストを迎える体制になったら大切なのが集客です。新規開業の場合、知名度がないため最初の集客の広告宣伝費は十分にかけましょう。ここで重要なのは何の媒体を使用するかということです。
広告宣伝費は経費の中でも多く占めるもので、費用対効果を考慮しなければ後々資金面で苦労してしまうこともあります。今はネットが主流なので、ネットの中のどのWebサイトで集客するか、自社集客はどのように行うかなど綿密な計画を立てておきましょう。
ホテル開業に必要な資金の調達方法
ホテル開業に必要な資金は、大きい額となります。ホテル開業をしたいと考えたときに資金を調達することになりますが、その調達方法は主に2つ、出資者を探すか金融機関の融資を受けることです。その2つの方法の詳細を解説していきます。
出資者を探す
資金に不安が多い人は出資者を探す方が安心でしょう。
具体的には、自分の経営に投資してくれる団体や人を探します。投資での開業の場合は、返済する必要がないのですが、出資者には利益の一部を得る権利や株式を貰える権利が発生します。併せて出資者となると経営の権利も得るため、経営に口を出されることもあり、自分の理想の経営ができなくなるリスクや自由度が低くなる可能性もあります。
金融機関の融資を受ける
ホテル経営を全て自分の手で行いたいのであれば、資金調達は金融機関の融資を受けることになります。いわゆるローンを組んで毎月返済してく形式です。
銀行に融資を受ける場合に必要なのが事業計画書です。この事業計画の内容により希望の融資が受けられるかどうか審査されます。ローンを組むため、利息の支払いが必要になるのはデメリットとなるでしょう。
ホテルの開業資金に影響するもの
ホテルの開業資金に直接影響するものがいくつかあります。まず大きなところでホテルの立地、物件の種類(新築、居抜き)、業態やホテルの経営のスタイルなどです。細かいところでいけば、購入する設備や備品なども関わってきます。これらは「事業計画」に記載しなければいけない事項であり、銀行や出資者が融資するに当たりチェックする項目となります。
ホテル経営のために必要な許可や資格
ホテルを経営するに当たって必要な許可や資格がいくつかあります。チェーン店やフランチャイズ方式にするなら全てが必要というわけではありませんが、所有直営方式なら以下の許可や資格が全て必要となります。
ホテル・旅館営業の許可
ホテルや旅館を営業するにあたっては、以下の旅館業法に基づいた営業許可を受ける必要があります。
- ホテル営業許可
観光ホテル・ビジネスホテルの事業を行うのであれば、必要になります。条件としては「客室は洋式中心、10室以上、1室の床面積は9㎡以上」と定められています。 - 旅館営業許可
温泉や観光をメインとした旅館事業を行うのであれば、必要になる許可です。条件としては「客室は和室中心、5室以上、1室の床面積は7㎡以上」と定められています。
加えて、下宿施設やペンション、民泊などの営業には別の許可が必要となりますので注意が必要です。
飲食店の営業許可
ホテルでは飲食店の営業許可が必要です。飲食をまったく出さないと言うなら不必要ですが、朝食を提供する場合やレストラン併設となると必要な許可となります。ホテル営業許可と同様に管轄の保健所に申請をし、その後の検査を合格したら許可をもらえるという流れです。
公衆浴場営業の許可
温湯や温泉などを使って入浴させるような施設を経営するなら、必要となる許可です。都道府県知事から得る許可となっており、各自治体の保健所に申請します。こちらも飲食店営業許可と同様、必要な書類を提出し検査を受け合格したら許可書をもらえる流れです。
食品衛生責任者
食費衛生責任者は、食品の製造や販売を行う事業所が必要とする資格です。飲食店経営には必要不可欠な資格となっています。資格の取得方法は食品衛生協会主催の講習を受講するだけであり、一度取得するといつでも飲食店経営を申請することができます。 もしホテル経営者が取得しない場合は、厨房を管理する人が取得しても良いでしょう。
防火管理者
ホテルの防火上必要な業務を遂行するための資格です。不特定多数の人が出入りするホテルでは必要な資格となっていますが、経営者に限らず管理職やある程度管理を任せられるような立ち位置の人が取得する形でも問題ありません。防火管理者を取得するには、各市町村で実施される講習を受講します。
ホテル経営を失敗しないために知っておくべきリスク
ホテル経営をする上での大きなリスクは2点あるため、それぞれ詳しく解説していきます。
初期費用が高額
ホテルの特性として、初期費用が高額になるという点があります。
運営費用はある程度ほかの業種と変わらない部分がありますが、初期費用に関しては規模により億単位になることも考えられます。初期費用は最初の投資になるため、のちに事業が失敗したときの費用面でのリスクは莫大です。
ホテル経営をするなら初期費用面の事業計画を明確に立てておきましょう。
景気やインバウンド需要の影響を受けやすい
ホテルの特性として、運営時に景気やインバウンド需要の影響を受けやすいというのもあります。円高、円安の状況、世界情勢などによりホテルの稼働率は大きく変化します。 こういった情勢の影響を受けやすいことは、事前に理解しておく必要があるでしょう。
ホテル経営を成功させるポイント
経営をするなら誰しも成功させたいですよね。
今やホテルは各都道府県にさまざまな形態のものがあります。経営を始めるとすると、今あるホテルとの差別化や徹底調査が必要となるでしょう。
ここでは、ホテル経営を成功させるポイントを解説していきます。
コンセプトとターゲットを明確にする
ホテル経営を成功させるポイントとしては、コンセプトとターゲットを明確にして絞り切ることです。
幅広い層を狙って間口を広くすると、最初は好調でも軌道に乗ってからの継続が厳しくなる場合があります。自社のコンセプト、ターゲット層を明確にしてそこを狙った集客を打ち出しましょう。運営をしながらもターゲットがズレていないかのチェックも必要です。
コンセプトに合ったエリアを選定する
自社のコンセプトを明確にしたら、それに見合ったエリアを選定することも重要です。
例えば高年齢、アッパー層、高価格帯層をターゲットにするなら静かでゆっくり休めるエリア、都会のど真ん中より少し離れた避暑地などが良いでしょう。
ファミリー層をターゲットにするなら、小さな子どもがいても移動がスムーズで、ホテルの周囲に子どもが遊べるスポットがあるエリアなどが良いです。
このように、絞ったターゲットやホテルのコンセプトに合わせたエリアを選定するのは、長く運営する上で大切なポイントとなります。
集客を徹底する
ホテル経営を成功させる上で、売上を上げることは最も大きなポイントです。売上を上げるための軸は、集客にあります。
ホテルは多種多様で各地にさまざまあり、競合しています。徹底的な集客を行わなければ、ほかのホテルにすぐに流れてしまう業界です。売上やデータを常に分析し、効果的な方法で集客を行っていきましょう。集客は開業当初だけでなく、経営していく限り継続的に力を入れていくポイントです。
初期投資やランニングコストをしっかり把握してホテル経営を検討しよう
今回は、ホテル開業における資金や手続き、成功させるポイントなど基礎知識について解説しました。ホテル経営は内容、費用、形態どれをとっても簡単なことではありません。ホテル経営をするなら大きな額を必要とするため、費用面をよく検討しておく必要があります。初期費用や運営していく上でのランニングコストを明確に把握して、利益の上がるホテル経営を行っていきましょう。
※掲載されている内容は更新日時点の情報となります。