レベニューマネジメントとは?ホテルの売上拡大につながる手法やポイントを徹底解説!

レベニューマネジメントとは?
ホテルの売上拡大につながる手法やポイントを徹底解説!

ホテル経営において、客室の売れ残りは、利益減少に直結する重要な問題です。そのため、空室を減らして、客室稼働率を上げることが重要です。

客室稼働率を上げるには、客室の割引を行う必要がありますが、安易に割引を行うと、売上が減少するリスクがあります。そこで、ホテル業界では、宿泊料金の適正化を図るため、「レベニューマネジメント」という手法が採用されており、これは利益を最大化するために不可欠な戦略の1つです。

この記事では、ホテルの売上拡大につながるレベニューマネジメントの手法やポイントなどについて、徹底解説します。

ホテル業界で使われるレベニューマネジメントとは?

ホテル業界で使われるレベニューマネジメントとは?

レベニューマネジメント(Revenue Management、収益管理)とは、過去のデータから需要を予測することにより客室価格をコントロールする手法のことです。

ホテル業界においては、季節やイベントに応じて最適な客室価格を設定します。ホテルの商品は客室であり、客室数はあらかじめ決まっているため、空室が多い場合、ホテルの損失につながります。

客室稼働率を上げるため、早割キャンペーンなどの割引プランを実施することがありますが、客室を割引価格で埋めたとしても、利益を上げることはできません。そのため、レベニューマネジメントによって、需要予測に応じて客室価格を変動させることで、利益の最大化を図ります。

レベニューマネジメントがホテル経営においてなぜ重要なのか?

レベニューマネジメントがホテル経営において重要なのは、過去のデータを分析することで、最適な価格が予測可能となるからです。最適な価格を予測することにより、利益を最大化することが可能となります。

レベニューマネジメントの導入以前のホテル業界は、繁忙期に客室価格を上げ、閑散期に下げるなどの取り組みはしていました。しかし、最適な価格を予測できなかったため、過去の実績を参考として需要予測をしたとしても、なかなか収益につなげることができませんでした。

レベニューマネジメントを導入すれば、さまざまな要素をもとに最適な価格を設定できるため、機会損失を防ぎ、効率よく利益の拡大につなげることが可能となります。

レベニューマネジメントの仕組み

レベニューマネジメントの仕組み

ホテル経営におけるレベニューマネジメントは、過去のデータを分析することにより需要を予測して、客室価格を変動させる仕組みです。レベニューマネジメントの具体例について、次の2つのケースを解説します。

  • 需要が高いとき
  • 需要が低いとき

需要が高いとき

レベニューマネジメントにおいて、ホテルの需要が高いとき、客室単価を高くします。

ホテル業界にとって、年末年始やゴールデンウィーク、お盆期間などは通常よりも需要が高くなります。また、ホテル近辺で花火大会やアーティストのライブ、スポーツの試合などが開催される場合にも、需要は高くなります。

このように需要が高いときは、通常より宿泊料金が高くても泊まりたいという顧客が増えます。そこで、客室単価を高く設定して、利益の最大化を図ります。

需要が低いとき

レベニューマネジメントにおいて、ホテルの需要が低いとき、客室単価を安くします。

ホテルの閑散期は、宿泊需要が低くなるため、いかに集客できるかが重要になります。そのため、ホテルとしては平日割や早割キャンペーンなどの割引を実施し、客室単価を安くしてできるだけ客室を埋める必要があります。

このようにレベニューマネジメントは、過去のデータから最適な客室単価を予測できるため、利益を最大化することができます。

イールドマネジメントやダイナミックプライシングとの違いは?

イールドマネジメントやダイナミックプライシングとの違いは?

レベニューマネジメントは、過去のデータから需要を予測することで販売価格を変動させる手法ですが、似たような用語にイールドマネジメントとダイナミックプライシングがあります。そこで、レベニューマネジメントとそれぞれの違いについて解説します。

イールドマネジメントとの違い

イールドマネジメント(Yield Management、収益管理)は、基本的にレベニューマネジメントとほぼ同じ意味を持っています。ただ、厳密に言うと、レベニューマネジメントとイールドマネジメントには違いがあります。

レベニューマネジメントは、価格設定だけでなく、それ以外の要素も考慮した上で、会社(ホテルなど)全体の収益を最大化する手法です。一方、イールドマネジメントは、ホテルの客室や飛行機の座席など特定の資源について、価格設定により、収益を最大化する手法です。

ダイナミックプライシング

ダイナミックプライシング(Dynamic Pricing、価格変動制)とは、販売開始後の予約状況に応じて価格を変動させる手法です。レベニューマネジメントもダイナミックプライシングも、需要に応じて価格を変動させるという点では同じですが、大きな違いは重視する予測範囲にあります。

ダイナミックプライシングでは、販売開始後の需要(予約状況)に応じて価格を変動させます。これに対して、レベニューマネジメントでは、過去のデータから需要を予測し、最適な価格設定をします。レベニューマネジメント、イールドマネジメント、ダイナミックプライシングの違いをまとめると、次のようになります。
 

レベニューマネジメント・イールドマネジメント・ダイナミックプライシングの違い

  レベニューマネジメント イールドマネジメント ダイナミックプライシング
適用範囲 会社(ホテルなど)全体における過去のデータ 特定の資源(ホテルの客室、航空機の座席など)における過去のデータ 販売開始後の需要
手法 価格設定以外も考慮 最適な価格設定 最適な価格設定

レベニューマネジメントのメリット・デメリット

レベニューマネジメントのメリット・デメリット

レベニューマネジメントには、メリットだけでなく、デメリットもあります。
ここでは、レベニューマネジメントのメリット・デメリットを解説します。

レベニューマネジメントのメリット

レベニューマネジメントのメリットとして、次の5点が挙げられます。

  • 収益を最大化できる
  • 売上の機会損失を防げる
  • コスト削減になる
  • 顧客の満足度が高くなる
  • 強みや弱点が分かる

レベニューマネジメントを活用するメリットとして、売上の機会損失を防ぎ客室稼働率を高めることで収益を最大化できることが挙げられます。需要の予測が可能なことから、事前に従業員の人数や用意する食材などが分かるため、コスト削減にもなります。

レベニューマネジメントでは、需要を予測するため、客室単価を最適化でき、少数精鋭の従業員でおもてなしすることが可能となります。そのため、顧客の満足度が高くなることが期待できます。

さらに、過去のデータを分析することによって、ホテルの強みや弱点が分かります。たとえば、毎年顧客が多い時期があることは「強み」、売上の機会損失が多い時期は「弱み」になります。ホテルの強みをさらに強くして、弱点を克服すれば、ホテルの収益は上がります。

レベニューマネジメントのデメリット

レベニューマネジメントのデメリットとして、次の2点が挙げられます。

  • さまざまなデータの情報収集が必要
  • 手間や時間がかかる

レベニューマネジメントを行うためには、さまざまなデータの情報収集が必要になります。ホテルにおける過去の宿泊状況はもとより、時期やイベントに応じた問合せ状況、ホテルの周辺地域の情報などが必要です。

データを収集したら、分析を始めますが、情報収集や分析には手間や時間がかかります。さらに、分析するには専門的な知識が必要です。自社内で対応できればいいのですが、対応できない場合には、システムを導入して使いこなせるようになる必要があります。しかし、システムを導入する場合、コストがかかるため注意が必要です。

レベニューマネジメントを実践するときの流れや方法

レベニューマネジメントを実践するときの流れや方法

レベニューマネジメントを実践する際の流れは、次のとおりです。

  1. 過去のデータを分析し、需要を予測する
  2. 予測から販売戦略を立て、料金を設定する
  3. 結果を検証して改善する

それぞれの方法について、順番に解説します。

過去のデータを分析し、需要を予測する

過去のさまざまなデータを分析することで需要を予測するレベニューマネジメントでは、分析元となるデータが重要になります。そのため、まずは過去のデータ情報を収集する必要があります。

ホテルについて収集するデータには、年齢や性別、住所、宿泊目的などの宿泊者情報のほか、ファミリー層やビジネス層などの客層などがあります。宿泊目的などは、販売戦略を立てる上で重要になります。予約サイトやSNSの口コミも、ホテルの過去の実績や現状を把握するために役立ちます。

また、ホテルの過去の実績や現状だけでなく、周辺のイベント情報や競合のホテル情報なども把握しておくことが重要です。季節ごとの需要やイベントに応じた需要が分かれば、需要の予測に役立ちます。

予測から販売戦略を立て、料金を設定する

予測した需要をもとに、販売戦略を立てていきます。需要が分かれば、最適な価格はいくらなのか、いつ早割キャンペーンや直前割を実施するのかなどの販売戦略が立てやすくなります。

このように具体的な戦略を立てることができれば、Web広告やSNSなどを利用したプロモーション施策が実施しやすくなります。レベニューマネジメントで設定した客室料金から収益目標を立てて、その目標から逆算して販売戦略を立てることで、効果的なマーケティング施策が可能となります。

結果を検証して改善する

レベニューマネジメントは1回で終わるわけではなく、結果を検証する必要があります。目標に対して立てた戦略がうまくいったとしても、同じ戦略がうまくいくとは限りません。顧客のニーズは多様化し、流行の波は短くなっている傾向にあるため、常に結果を検証して、改善することが重要です。

結果を検証する際には、主観にとらわれることなく、客観的な数字やデータを活用し、多角的な視点で分析していく必要があります。その結果、問題点や課題が見えてくるため、効果的なレベニューマネジメントの運用が可能となります。

レベニューマネジメントを行う際の注意点

レベニューマネジメントを行う際の注意点

レベニューマネジメントを行う際の注意点として、次の2点があげられます。

  • 販売価格が不公正だと思われる
  • オーバーブッキングになりやすい

販売価格が不公正だと思われる

レベニューマネジメントを行う際の注意点として、販売価格が不公正だと思われることが挙げられます。レベニューマネジメントのように需要予測により客室価格を変動させる手法は、同じ客室であるにもかかわらず、時期や日によって宿泊料金が変わるからです。

そのため、「損をした」「ズルい」と感じる宿泊客もいます。その結果、クレームを入れる宿泊客もいるため、予約サイトやSNSの口コミにより風評被害につながるリスクもあります。

このようなリスクを軽減するためには、あらかじめ、季節やイベントの時期などにより客室価格が変動することを説明しておく必要があります。
客室価格が変動する理由をわかりやすく説明すれば、顧客も納得してくれます。
 

オーバーブッキングになりやすい

オーバーブッキングとは、過剰予約のことで、予約後のキャンセルを見越してホテル側が多くの予約を受け付けることで発生します。ホテルの客室予約の中には、直前にキャンセルが発生する客室があるため、オーバーブッキングは、できるだけ空室を減らすための対策でもあります。

しかし、オーバーブッキングを行って、客室を確保できなかった場合は、ホテルの責任になってしまいます。ホテルには、代替案を提案する責任があり、対応を誤った場合、クレームや風評被害につながるリスクもあるため、対応には注意が必要です。

レベニューマネージャーなら知っておくべきホテル用語や指標

レベニューマネージャーなら知っておくべきホテル用語や指標

レベニューマネジメントでは、レベニューマネージャー(レベニューマネジメントの担当者)なら知っておくべきホテル用語や指標があります。

ここでは、ホテル業界において、押さえておくと効果的なホテル用語や指標について、次の4点を紹介します。

  • OCC(Occupancy Ratio、客室稼働率)
  • ADR(Average Daily Rate、客室平均単価)
  • RevPAR(Revenue Per Available Room、販売可能客室あたりの売上)
  • ブッキングカーブ

OCC(Occupancy Ratio、客室稼働率)

OCC(Occupancy Ratio)とは、客室稼働率のことを指します。対象日に対して客室がどれくらい埋まっているのかを意味し、数値が高いほど、空室対策が効果的だったといえます。

算出するための計算式は、以下のとおりです。

「OCC(客室稼働率)=利用客室数÷利用可能客室数×100%」
 
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  • 客室稼働率を日別で確認可能
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ADR(Average Daily Rate、客室平均単価)

ADRは、客室平均単価のことを指します。対象日や対象期間における客室の平均単価を意味し、単価が高いほど売上増加や利益増加につなげることが可能です。

算出するための計算式は、以下のとおりです。

「ADR(客室平均単価)=売上合計÷販売客室数」

RevPAR(Revenue Per Available Room、販売可能客室あたりの売上)

RevPARは、販売可能な客室(1室)あたりの売上のことを指します。実際に稼働している客室に対する販売単価の平均のため、販売価格を設定する上で参考になります。

算出するための計算式は、以下のとおりです。

「RevPAR(販売可能客室あたりの売上)=OCC(客室稼働率)×ADR(客室平均単価)」

ブッキングカーブ

ブッキングカーブとは、対象日における予約のペースや傾向をまとめたグラフのことを指します。縦軸を客室稼働率、横軸を対象日までの日数によってグラフ化することで、予約状況を可視化することができ、その後のキャンペーンなどに役立てることが可能です。

レベニューマネジメントシステムの活用もおすすめ

レベニューマネジメントシステムの活用もおすすめ

レベニューマネジメントを実施する場合、レベニューマネジメントシステムを活用することをおすすめします。

効率的に分析・検証していくには、レベニューマネジメント専用ツールやシステムを活用するほうが効果的だからです。システムによっては、AI技術を活用することで、分析精度を高める効果も期待できます。

レベニューマネジメントシステムを利用するには、コストがかかりますが、人的リソースの不足を補うなどのメリットがあるため、レベニューマネジメントシステムを活用することはおすすめです。

レベニューマネジメントシステムの主な機能

近年、レベニューマネジメントの需要拡大により、さまざまなレベニューマネジメントシステムが登場しています。展開する企業によって特徴は異なりますが、レベニューマネジメントシステムの主な機能について、次の3点を紹介します。

  • 需要予測のための分析機能
  • 客室価格の設定機能
  • 予約状況を把握する機能

需要予測のための分析機能

レベニューマネジメントシステムには、需要予測のための分析機能があります。

レベニューマネジメントでは、需要を予測するため、さまざまな過去のデータを分析する必要があるからです。分析するデータには、売上以外にもOCCやADR、RevPARなどのほか、市場動向や競合他社の動き、周辺のイベントなどがあり、多岐にわたります。

これに対しレベニューマネジメントシステムでは、用途に応じてAI技術などを活用して、効率よく分析することが可能です。より多角的かつ客観的に分析することができれば、精度の高い需要予測につなげることができます。

客室価格の設定機能

レベニューマネジメントシステムには、客室価格の設定機能があります。この機能を利用することで、ホテルの客室価格を最適化することが可能です。システムによってはホテル管理システム(PMS)と連携させ、需要予測の精度を高めることができるため、利益の拡大につなげることが可能です。

予約状況を把握する機能

レベニューマネジメントシステムには、予約状況を把握する機能もあります。この機能を利用することで、対象日や期間に応じたブッキングカーブも可視化できるため、効率よく需要の予測や戦略立案、プロモーション施策などを実施することが可能です。

ホテル・旅館の収益最大化に不可欠なレベニューマネジメント

ホテル・旅館の収益最大化に不可欠なレベニューマネジメント

この記事では、ホテルの売上拡大につながるレベニューマネジメントの手法やポイントなどについて、徹底解説しました。ホテル・旅館の経営において、客室の売れ残りによって空室が発生することは機会損失につながり、売上や収益にも影響を及ぼします。しかし、空室を埋めるために安く売ったとしても利益が減ってしまうため、安定した経営にはつながりません。

より効率的に収益拡大につなげるためには、過去のデータを分析することにより需要を予測し、状況に応じて最適な価格で販売するレベニューマネジメントという手法は効果的です。 今回紹介した内容も参考に、レベニューマネジメントを活用し、に収益拡大につなげていきましょう。

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